大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

宇都宮地方裁判所 昭和53年(わ)77号 判決

本籍

宇都宮市泉町二、九八五番地

住居

同市宿郷町四四〇番地

医師

大山登曠

昭和九年三月一四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官稲見攝五出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月および罰金一、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から一年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、宇都宮市宿郷町四四〇番地に居住し、同所において、妻文代をして経理関係を担当せしめ、産婦人科等の診療を目的とする大山医院を経営しているものであるが、所得税を免れようと企て、右文代と共謀のうえ、その業務に関し

第一  昭和四九年分の総所得金額は五、一〇八万二、三一七円で、これに対する所得税額は二、五二九万八、九〇〇円であるのに、いわゆる自由診療収入の大部分を除外し、これによつて得た現金を無記名式貸付信託として委託するなどの不正の方法により、所得の一部を秘匿したうえ、同五〇年三月一三日、同市昭和二丁目一番七号所在の宇都宮税務署において、同署長に対し、総所得金額は二、七四九万五、〇〇〇円で、これに対する所得税額は一、〇八〇万五、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて、右不正の行為により、同年分の正規の所得税額と申告所得税額との差額一、四四九万三、三〇〇円を免れ

第二  同五〇年分の総所得金額は四、五九〇万六、八六〇円で、これに対する所得税額は二、〇七七万四、五〇〇円であるのに、前同様の方法により、所得の一部を秘匿したうえ、同五一年二月二七日、前記宇都宮税務署において、同署長に対し、総所得金額は一、七五九万六、一二〇円で、これに対する所得税額は四四一万三、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて、右不正の行為により、同年分の正規の所得税額と申告所得税額との差額一、六三六万一、五〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の被告人に対する各質問てん末書

一、被告人作成の各答申書

一、大山文代の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の大山文代および岡村博子に対する各質問てん末書

一、戸沢幸五郎、塚越禎三および藤井秀一作成の各供述調書

一、大山文代、矢追悌、平井陸、宮坂昌宏、岩瀬輝男、潮田旦、柏崎栄五郎、芝野昇、黒須実、鈴木信次、奥沢正八郎、堀和夫、清川昭雄、鶴崎美智博、長尾郁朗、小川俊雄、藍原健次、ト部政男、穂積正昭、小薬トキ、青山正吾、大根田四郎次、上田匠一、川俣栄太郎、上村哲夫、小村勇平、小野沢キミおよび石川孝吉作成の各答申書

一、宇都宮税務署長作成の各証明書

一、関東信越国税局収税官吏大蔵事務官作成の「診療収入調査書」、「薬品仕入調査書」、「経費調査書」、「経費差額調査書」、「預金・有価証券等残高及び受取利息調査書」、「現金預金有価証券等確認書」ならびに「減価償却費及び未償却残高調査書」と題する各書面

一、押収してある入院分請求メモ三綴(昭和五三年押第四六号の五)、同確定申告書控一綴(同押号の六)、同外来簿一冊(同押号の八)および同小手帳一冊(同押号の九)

判示第一の事実につき

一、関東信越国税局収税官吏国税査察官作成の「脱税額計算書」、「修正損益計算書」および「調査所得(調査による増減金額)の説明書」と題する各書面(いずれも検一号)

一、押収してある自費分入金メモ一綴(昭和五三年押第四六号の一)、人工妊娠中絶同意書一綴(同押号の三)、同外来簿八冊(同押号の七)、同請求書等(四九年分)一綴(同押号の一〇)および同不動産売買契約書等一綴(同押号の一一)

判示第二の事実につき

一、関東信越国税局収税官吏国税査察官作成の「脱税額計算書」、「修正損益計算書」および「調査所得(調査による増減金額)の説明書」と題する各書面(いずれも検二号)

一、押収してある自費分入金メモ一綴(昭和五三年押第四六号の二)および同人工妊娠中絶同意書一綴(同押号の四)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも刑法第六〇条、所得税法第二三八条(第一二〇条第一項第三号)に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法第四八条第二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役六月および罰金一、〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法第一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判の確定した日から一年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 和田忠義)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例